診療内容
シミ・イボ
シミ・イボの種類
シミ・イボには色々な種類があり、それぞれ治療法が異なります。また、まれに皮膚癌が隠れていることがあります。そのため、まずはきちんとトレーニングを積んだ皮膚科医の診察を受け、正確な診断をつけることが大事です。当院では経験豊かな皮膚科専門医がダーモスコープ(シミを詳細に観察することができる特殊な拡大鏡)を用いて診断します。
代表的なシミ・イボに老人性色素斑、脂漏性角化症、そばかす、脂腺増殖症、肝斑、炎症後色素沈着、アクロコルドンがあります。また、まれですが注意しなくてはいけないシミ・イボに皮膚癌があります。
老人性色素斑(ろうじんせいしきそはん)
一般的に「お顔のシミ」といわれるものは老人性色素斑であることが多いです。平らで薄茶~濃い茶色いシミです。一部盛り上がり、脂漏性角化症になっていくものもあります。
紫外線の当たりやすい顔や手の甲によくできます。加齢で増加しますが、早い方では20代から出現します。
脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)
一般的に「お顔のイボ」といわれます。茶色いシミに見えますがよく見るとボツボツと表面が盛り上がっているのが特徴です。
中年以降に顔や頭をはじめ全身にできます。
そばかす
両頬~鼻に多発する薄く小さなシミの総称です。雀卵斑(赤毛の白色人種に多くみられる小型のシミで5歳頃から出現し夏に悪化するのが特徴)や、小型の老人性色素斑が混在した病態と考えられます。
脂腺増殖症(しせんぞうしょくしょう)
皮脂を分泌する皮脂腺が増大し隆起したもので、顔に黄白色の小さな盛り上がりとして出てきます。
多くは中年期、早ければ20代から出始め、年齢を経るごとに数が増えます。
肝斑(かんぱん)
両頬に左右対称性に茶色いシミとして出現します。境界がくっきりしていて眼の周りを避けるように分布するのが特徴です。30~40代の女性に高い頻度でみられます。老人性色素斑や脂漏性角化症を合併することがあります。
女性ホルモンが発症に関与すると言われており、妊娠、ピル服用で発症することがあります。肌のこすり過ぎや紫外線も大きく影響します。
炎症後色素沈着(えんしょうごしきそちんちゃく)
長引く湿疹やアトピー性皮膚炎、ニキビ、やけど、虫刺され等が治ったあとに広く残る茶色く淡いシミです。
アクロコルドン
首にできる小さなイボです。1mm大までの小さな肌色~茶色の突起が無数に出てきます。摩擦や加齢で増加します。
皮膚癌(ひふがん)
顔にできる皮膚癌には日光角化症(にっこうかくかしょう)や基底細胞癌(きていさいぼうがん)、有棘細胞癌(ゆうきょくさいぼうがん)、悪性黒色腫(あくせいこくしょくしゅ)などがあります。これらは良性のシミと非常に紛らわしい見た目をとることがあり注意が必要です。
自宅でできるシミ対策
自宅でできるシミ対策として、肌をこすらない、紫外線を避ける、化粧品をうまくとりいれる、の3点をお勧めします。
肌をこすらない
肌をこすったり叩いたりするのは避けましょう。シミ、赤ら顔の原因になります。
- 化粧落としは優しく拭き取るか、オイルの場合は量をたっぷり取ってこすらなくても化粧がしっかり落ちるように工夫しましょう。
- 洗顔の時はたっぷりの泡でなでるように洗います。
- 化粧水、乳液はたっぷり取って手でおさえるようになじませてつけます。
紫外線を避ける
紫外線は肌の老化を早めます。シミの原因になることはよく知られていますが、紫外線の本当に怖いところは真皮の深くまで到達してシワやたるみの原因になることです。紫外線対策を地道に続けるか続けないかで数年後の肌質が大きく変わります。
- 短時間の外出、天気が曇りのときも日焼け止めを忘れずにぬりましょう。
- UVA波はガラスを通ります。室内や車内でも油断は禁物です。
- 生理前後、妊娠中、ピル内服中は女性ホルモンの影響で紫外線感受性が上がります。紫外線対策を念入りにしましょう。
- 日焼け止めの上にパウダーファンデーションやフィニシングパウダーを重ねるとさらに紫外線防御効果が上がりお勧めです。パウダーが物理的に紫外線を跳ね返してくれます。
- 敏感肌の方は紫外線吸収剤フリーのものをえらぶとよいでしょう。
化粧品をうまくとりいれる
美白成分が配合された化粧品を使うとシミ予防になります。代表的な美白成分にはハイドロキノン、ビタミンC誘導体、トラネキサム酸、アルブチン、コウジ酸等があります。
ピーリング作用のある製品を取り入れるのもお勧めです。ピーリングとは、酸などを使って古い角質を除去し肌の再生を促す美容法です。ピーリングをすることによって肌のくすみ・シワ・たるみ・毛穴の開きが改善します。さらに、美白化粧品やシミ治療とあわせて行うことで効果が高まります。ピーリング製品には様々ありますが、スクラブ配合や拭き取りタイプは肌を傷めることがあるため、洗い流すタイプがお勧めです。
当院でできるシミ・イボの治療
トレチノインハイドロキノン療法(自由診療)
お顔のシミ(老人性色素斑や肝斑)を薄くする治療です。トレチノインとハイドロキノンという2種類の強力な美白剤を使ってシミを薄くします。小じわにも効果があります。
治療期間は3ヶ月間です。 1ヶ月おきにレビュー2(顔のシミの状態を測定・解析できる肌画像診断システム)撮影を行い、治療効果を客観的に評価します。
トレチノインについて
皮膚の新陳代謝を強力に亢進させ、シミの色素であるメラニンを排出します。メラニン排出系の外用薬としては現在最も効果の高い物質です。また、真皮に働きかけ、小ジワを改善する効果があります。
トレチノインと同様のビタミンA誘導体で有名なものに「レチノール」があります。シミ、シワの改善効果があることから市販の美容液に配合されています。トレチノインはこのレチノールの100倍の薬理作用をもつ物質です。
当院では各濃度のトレチノインをそれぞれの肌状態にあわせて選択し治療に用います。
ハイドロキノンについて
シミの色素であるメラニンの合成を強力に阻害します。配合調整が難しく、皮膚に対する刺激性があるため一般の化粧品には2%以下の低濃度でしか配合が許されていません。
当院では、高濃度で安定性の高いクリニック専売品のハイドロキノンを採用しています。
注意点
- ※本治療は紫外線の少ない冬季に行うことをお勧めしています。
- ※副作用として皮膚炎(赤み、皮むけ)が必発します。この反応には個人差があるため、副作用が最小限かつシミに対する効果が最大限となるよう診察時に塗り方を調節させて頂きます。
- ※耐性により本来の有効性が得られなくなるため、治療期間を3ヶ月間と設定しています。再開する場合にも1~2ヶ月間の休薬期間をおくことをお勧めしています。
- ※妊娠中の方、授乳中の方、妊娠の可能性のある方はトレチノインをお使い頂けません。
- ※ハイドロキノンにアレルギーのある方はビタミンCの美容液を代わりに使用することをお勧めしています。
美容内服(自由診療)
肝斑を薄くする治療です。トラネキサム酸とシナールの2種類の飲み薬を内服します。飲み始めて1~2ヶ月ほどで効果が現れはじめ、4ヶ月ほど継続するとしっかり効果を実感される方が多いようです。
当院では、高い効果を得るためトラネキサム酸を1500mg/日の高用量で内服することをお勧めしています(参考:市販のトランシーノはトラネキサム酸を750mg/日含んでいます)。
トラネキサム酸について
1979年に二條医師らが慢性じんましんの治療にトラネキサム酸を投与したところ、元々あった肝斑が3週間で消失したことで肝斑への効果が判明しました。
トラネキサム酸がなぜ肝斑に効くのかまだ詳しくはわかっていませんが、シミの色素であるメラニンの産生を抑制し、慢性炎症を抑制することで効果を発揮すると考えられています。
シナールについて
ビタミンCとビタミンB5が配合された複合ビタミン剤です。ビタミンCはシミの色素であるメラニンの産生を間接的に抑制しシミを薄くします。その他、抗酸化作用、抗しわ・たるみ・ニキビ作用があり美肌維持に欠かせない栄養素です。
ビタミンB5は一緒にとることでビタミンCのはたらきを助け、肌をきれいに保つ効果があります。
注意点
- ※過去に血栓症をおこしたことのある方、腎不全の方はトラネキサム酸を内服できません。
液体窒素凍結療法(保険診療)
費用のめやす | 800円程度(3割負担の場合の自己負担額) |
脂漏性角化症や、尋常性疣贅(ウイルス性のイボ)に有効です。
治った後にシミの色が残る(炎症後色素沈着)ことがありますが数ヶ月程度で薄くなります。
治療のながれ
- 液体窒素をスプレーする
- 1~2週間おきに上記を繰り返す
炭酸ガスレーザー手術(自由診療)
炭酸ガスを利用してできものを除去します。顔や頭の脂漏性角化症、脂腺増殖症、首のアクロコルドンの治療に適しています。
高エネルギーのレーザーを用いて短時間で切除するため周囲の組織のダメージが最小限で済み、比較的傷が目立ちにくいです。
状況によっては通常の手術(保険診療)が適している場合があり、医師の判断で提案させて頂きます。
治療のながれ(脂漏性角化症、脂腺増殖症)
- 局所麻酔の注射をする
- レーザーで切除する
- 傷を軟膏、絆創膏でおおう
治療のながれ(首のアクロコルドン)
- 1時間前に麻酔クリームをぬる
- レーザーで切除する
- 傷を軟膏、ガーゼでおおう
注意点
- ※治療後は2週間ほど絆創膏で傷口を覆っていただく必要があります(首のアクロコルドンは除く)。
- ※ケロイド体質(傷跡が盛り上がる体質)の方は行えません。
Qスイッチルビーレーザー(自由診療、保険診療)
シミのメラニン色素を選択的かつ効率的に破壊します。周りの正常な皮膚を傷つけることなく、切れ味鋭いシミ治療が可能です。
当院では老人性色素斑、口唇メラノーシス、そばかすに対し自由診療で治療を行っています。扁平母斑、太田母斑、外傷性色素沈着症等については保険診療で治療可能です。
治療のながれ
- 1時間前に麻酔クリームをぬる(希望者のみ)
- レーザーを照射する
- 軟膏をぬり保護材でおおう
老人性色素斑の治療経過の一例
治療には個人差があります。治療後3~6ヶ月で赤みもとれ、周りの皮膚と同じ色調に戻る場合が多いですが、一過性の色素沈着が1年以上続く場合もあります。
治療前
治療直後
3日後
10~14日後
1ヶ月~6ヶ月後*
そばかすの治療経過の一例
治療前
治療後
注意点
- ※治療後数日は赤みや腫れが目立ちます。治療後少なくとも1週間は保護材で照射部位を覆います。
- ※照射部位に色素沈着が出現することがあります。適切なアフターケアで自然に治る場合が多いですが、必要時は外用薬等を追加します(自由診療)。
- ※以下に該当する場合は治療ができません:光感受性の強い方、光感受性を増強させる薬剤を内服中の方、前癌病変・悪性腫瘍・その疑いのある方、出血性疾患を有する方、肝斑を有する部位、リウマチ既往歴・金製剤の服用歴がある方、金の糸を入れている部位、肌色・白色の刺青を入れている部位。
通常の手術(保険診療)
費用のめやす | 4,000円~(3割負担の場合の自己負担額) ※場所や大きさによって金額が変動します |
脂漏性角化症やほくろ、その他のできものに対して行います。
治療のながれ
- 局所麻酔の注射をする
- メスで切除する
- 縫合する(縫合しない場合もあります)
- 傷を軟膏、ガーゼでおおう
注意点
- ※顔では5日前後、その他の部位では7日~14日前後に抜糸を行います。それまでの間、傷口を絆創膏でおおって頂く必要があります 。